4歳男子と女の裸

4歳になる息子と時々連れ立って、銭湯に行く。まだひとりで入ることはできないので、女湯に同伴する。

よく行く場所は、休憩スペースにおもちゃやテレビもあったりしてとても快適なので、誘ったら二つ返事でついてくるし、遊べるから好きなのかなと思っていた。

ある日、日が暮れた銭湯の帰り道

「どうして、おふろやさん好きなの?」と訊いたら、

「だっておっぱいがいろいろあるから!」

と、とても小さな、しかし弾んだ声でつぶやいた。周りには私しかいなかった。
そのあと「おっぱいらららー♪」(オリジナルの曲)とボーイソプラノを震わせながら上機嫌で帰った。

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おふろやさんにある女達の裸はヌード(nude)ではなくネイキッド(naked)だ。みんな一定の公共ルールを守りながら寛いでいる。
息子の言う通り、いろんなおっぱいがある。湯煙の中で肌色が多めなので全体的にふんわりしている。私は彼が走ったりしないように手を繋いで、ルーティンの巡り方で入浴する。
お気に入りは露天風呂だ。ドアを開けると、そこには少しのぼせて夜空を見上げながら、車座を少し崩して湯船の浅いところに座っている女が居て、殆ど性器が見えそうなポーズだったりする。
息子の視線のやりとりや言動については特に失礼ってこともなく、ただふんわりしたまあるい身体を自然な感じで見上げ、みとれていた。「おっぱいっていいなぁ」という気持ちが表情から伝わってくる。女は息子が入浴して30秒ほど経つとふと我に帰ってザアーっと上がった。ゆったりとしたサイズのお尻からポタポタお湯が滴るのを見送りながら、明らかに残念そうな顔を浮かべなんとなく取り繕うように、二人っきりになった私と脈略のない話題を一方的にペラペラと喋り出す。

4歳の男の子と風呂に行くのは本当に面白い。ただ面白いだけではなく、裸の女達にいろんな事を教わるのだ。ある日、裸になった解放感でシャワー台の所で息子が放尿したことがあった。私が目を離した一瞬の隙の出来事だった。甲高い声が風呂場中響いて、明らかに怒ってる。3人の裸の女達が息子の元に集まり、説教してくれていた。以来、自宅でも絶対にバスルームで放尿はしなくなった。
脱衣場ではしゃぐのを制するのに至っては、裸の女達の様々な<下ネタいじり>が効いているよう。中でも、「夕飯はソーセージにしようかなー」というのは本当にびびっていた。まだまだファンタジーの世界に生きている彼にとって、リアリズム満載の裸の女達の説教は怖くて仕方ない。しかし大好きなおっぱいがそこにはある。だから、耳鼻にちゃんとはいるのだ。飴と鞭である。